2025
12.10

高島市今津町ヌノニシタイ初店舗 大盛況の幕開け

イベント, ショップ, 今津町

ヌノニシタイ初の実店舗オープン、大盛況の行列
出典:@nunonishitai on X

滋賀県高島市今津町に、縫製ブランド「nuno ni shitai.」(ヌノニシタイ)の初となる工房兼ショップが11月22日にオープンしました。この日は開店前から30名以上の来客が並ぶ大盛況ぶりで、遠方からの訪問者も目立ちました。高島市は琵琶湖西岸に位置する自然豊かな地域ですが、人口減少が進む消滅可能性都市として知られています。そんな中で、地元縫製工場のファクトリーブランドが注目を集めた背景には、独自の素材活用とSNSを通じた情報発信があります。本記事では、オープンの詳細と高島市への影響を解説します。

今津町の縫製遺産とヌノニシタイの独自デザイン

高島市今津町は、琵琶湖の恵みを直接受ける湖畔エリアです。ヌノニシタイの工房兼ショップは、この今津町の中心部に位置し、住所は高島市今津町(詳細は公式サイト参照)。店舗面積は約50平方メートルで、工房機能と販売スペースを兼ね備えています。オープン初日の11月22日、午前10時の開店予定に対し、開店1時間前には行列ができ、初日だけで数百名の来客を記録しました。製品の主力は、琵琶湖産のヨシを編み込んだ三つ編みデザインの帆布バッグで、価格帯は5,000円から15,000円程度。バッグの持ち手部分にヨシの三つ編みを施すことで、軽量かつ耐久性のある独自性を発揮しています。

このブランドのルーツは、1975年に今津町で創業した小さな縫製工場に遡ります。当初はOEM生産を主とし、鞄や雑貨の請負を中心に約50年間、地元で職人技を磨いてきました。社員11名のうち、ベテラン職人は50年近いキャリアを有し、全員が縫製専門の職人です。ヌノニシタイの立ち上げは、2020年代初頭に代表の中矢佳希氏が主導。地元素材のヨシを活用することで、琵琶湖の自然環境を製品に反映させるコンセプトを採用しました。ヨシは琵琶湖周辺で豊富に生育する多年草で、収穫量は年間数トン規模。高島市の里山と湖沼の生態系が支える資源であり、ヌノニシタイはこれを帆布素材と組み合わせることで、環境負荷の低いエコプロダクトを実現しています。

高島市の縫製産業は、戦後から続く伝統ですが、グローバル化の影響で中小工場の廃業が相次いでいます。総務省のデータによると、高島市の製造業従事者は2020年から2025年にかけて約15%減少しており、若手後継者の確保が課題です。一方、ヌノニシタイはInstagramを中心としたSNS発信で全国的な認知を獲得。フォロワー数はオープン前で数万人規模に達し、ECサイトでの予約販売が好調でした。このアプローチは、高島市の他の地場産業、例えば朽木の伝統工芸やマキノの農産物ブランドと比較して、デジタルマーケティングの活用度が高い点で際立っています。メリットとして、地元雇用創出(新たに2名のアルバイト採用)と観光誘致が挙げられますが、デメリットは季節変動の影響を受けやすい点。冬期のヨシ収穫減少を補うため、帆布中心のラインナップを強化しています。

オープン日の現場熱気と地域波及効果

オープン初日の様子は、店舗前の舗道に並ぶ来客の姿で象徴されます。主な来客層は20代から40代の女性で、大阪や京都からの日帰り訪問者が半数以上を占めました。店舗内では、三つ編みバッグのデモンストレーションが行われ、職人がヨシの編み込み工程を説明。来客からは「琵琶湖の風を感じるデザイン」「地元工場直販の新鮮さ」といった声が寄せられました。売上は初日だけで計画の150%を超え、限定品のヨシ編みポーチは即完売。SNS上では、オープン直後に数百件の投稿が拡散され、ハッシュタグ「#ヌノニシタイ」がトレンド入りしました。

この盛況の要因は、高島市のアクセシビリティにあります。今津町は国道161号線沿いに位置し、京都駅から車で約1時間、JR近江今津駅から徒歩10分圏内。琵琶湖の湖畔景観が店舗のバックドロップとなり、訪れる人々にリラックスした体験を提供します。他地域との比較では、例えば隣接する大津市の湖畔ショップ群は観光客依存が強い一方、ヌノニシタイは地元生産のストーリー性を武器に差別化。地域への影響は多岐にわたり、初週だけで周辺飲食店の利用が20%増加したとの報告があります。経済効果として、年間売上見込みは数千万円規模で、高島市の小規模事業者支援基金(市条例に基づく補助金)活用により、店舗改装費の半分を公的支援で賄いました。一方で、消滅可能性都市の文脈では、こうしたブランド化が若年層のUターン促進につながる可能性を秘めています。総務省の2040年予測では、高島市の人口は現在約4.5万人から3万人台へ減少が見込まれますが、ヌノニシタイのような取り組みが、里山文化の継承と新規移住者の呼び水となるでしょう。

高島市の今津町は、琵琶湖の水運と里山の豊かな植生が融合した独特の環境です。ヌノニシタイのオープンにより、地元縫製の職人技が全国に発信され、湖畔の日常が新たな価値を生み出しています。以下に要点を整理します。

  • オープン概要: 2025年11月22日、高島市今津町に工房兼ショップ「nuno ni shitai.」開業。営業時間は12:00〜19:00、不定休。
  • 製品の特徴: 琵琶湖産ヨシを使った三つ編み帆布バッグ。軽量・耐久性が高く、価格は5,000円〜15,000円。雑貨類も展開。
  • 初日の実績: 開店前30名以上の行列、来客数百名。売上計画比150%達成、SNS拡散で全国注目。
  • 地域影響: 地元雇用創出と観光促進。周辺経済活性化、縫製産業の後継者育成に寄与。

今後、12月13日よりオンラインショップでの予約再開が予定されており、冬季限定のヨシ加工品が登場します。高島市のメタセコイア並木散策と連動したワークショップも検討中です。こうした取り組みが、琵琶湖西岸の里山文化をさらに深めていくでしょう。

参考文献:

  • @nunonishitai on X
  • PR TIMES「琵琶湖で育ったヨシを使った三つ編みバッグが話題の鞄・雑貨ブランド『nuno ni shitai.』滋賀・高島市に初の工房兼店舗オープン」(2025年11月5日)
  • 繊研新聞「三つ編みバッグの『ヌノニシタイ』滋賀県高島市に工房兼店舗オープン」(2025年11月28日)
  • ヌノニシタイ公式オンラインショップ(https://store.nunonishitai.jp/)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。