12.22
高島市 江若風力発電事業変更案 住民反対の声高まる
江若風力発電事業は、滋賀県高島市と福井県若狭町の県境に位置する三十三間山一帯で計画されている大規模風力発電施設です。事業者は2025年12月19日までに当初計画からの変更案を公表し、発電機の高さを180メートルから169メートルに小型化し、最大出力を17パーセント縮小する内容を示しました。しかし、この変更案に対しても、地元住民からは環境破壊や景観損失への懸念が強く、反対運動が続いています。高島市の豊かな里山と琵琶湖の自然環境を考慮した文脈で、住民側は変更が不十分であると指摘しており、事業全体の見直しを求めています。本記事では、変更案の詳細と住民の反対理由を分析し、地域への潜在的な影響を探ります。
変更案の公表とその背景
事業者は、景観保護を名目に発電機の規模を縮小した変更案を明らかにしました。具体的に、風車の高さを169メートルに抑え、出力も当初計画から17パーセント減らす内容です。この変更は、2025年11月頃から住民や自治体の意見を反映したものとされていますが、仮称を「三十三間山風力発電事業」から「江若風力発電事業」に改めた点も含め、住民側からは表面的な修正に過ぎないとの評価が目立ちます。
高島市の三十三間山は、標高約800メートルの山地で、豊かな森林と多様な野生動物が生息する地域です。琵琶湖の水源地としても重要であり、伝統的な里山文化が根付いています。この事業は当初、風車20基以上の設置を予定しており、建設による森林伐採が広範囲に及ぶ可能性があります。変更案の公表は、住民説明会での反対意見が高まったことを受けての対応ですが、事業者は環境アセスメントの再実施を約束しつつ、着工に向けた手続きを進めています。
住民反対の主な理由と具体的事例
住民側は、変更案が根本的な問題を解決していないと主張します。まず、景観の損失が挙げられます。高島市の三十三間山は、ハイキングや自然観察の場として地元住民に親しまれており、風車の設置により視界が遮られ、琵琶湖畔からの眺めが損なわれる恐れがあります。変更で高さが11メートル低くなったものの、依然として周囲の山並みを上回る規模であり、夜間の点滅灯による光害も懸念されています。
次に、環境への影響です。建設過程での森林伐採は、土壌流出を招き、琵琶湖の水質悪化を危惧する声が強いです。高島市の里山は、希少種を含む鳥類や哺乳類の生息地であり、風車の回転音や低周波音がこれらの生態系を乱す可能性があります。住民からは、近隣の風力発電施設で報告された鳥類の衝突事故や、騒音による睡眠障害の事例を引用し、変更案がこれらを十分に考慮していないと指摘されています。例えば、福井県側の若狭町では、類似の風力プロジェクトで住民の健康被害が報告されており、高島市でも同様のリスクが予想されます。
さらに、低周波音の健康被害が大きな反対要因です。風車の回転により発生する低周波振動は、頭痛や不眠を引き起こすとされ、海外の事例では住民移住を余儀なくされたケースもあります。高島市の山間部住民は、三十三間山の風車が集落に近接するため、日常的な生活への影響を懸念しています。変更案では出力縮小により騒音が軽減されると事業者は説明しますが、住民側は独立した第三者機関による検証を求めています。
地域への影響と他地域比較

この事業がもたらす影響を多角的に分析すると、高島市の独自性である自然資本の喪失が顕著です。琵琶湖の恵みを活かした農業や観光業が基幹産業である高島市では、風力発電の導入が逆効果になる可能性があります。他地域の比較として、和歌山県の風力発電施設では、低周波被害で住民の苦情が相次ぎ、一部撤去を求める運動が起きています。一方、欧州の事例では、住民参加型の計画で成功したケースもありますが、日本では事業者の主導が強く、住民の声が十分反映されない構造が問題視されています。
メリットとして、再生可能エネルギーの推進が挙げられますが、デメリットの環境負荷が上回ると住民は主張します。高島市の今津町やマキノ町に近い位置のため、観光客減少による経済損失も懸念され、里山の伝統的な林業への打撃も避けられません。変更案は出力縮小により発電量が減るものの、事業の経済性は維持されると事業者は述べていますが、住民側は長期的な生態系回復コストを考慮すべきと強調します。
反対運動の展開と行政の対応
住民反対運動は、2025年に入り活発化しています。高島市議会では、事業の見直しを求める意見書が提出され、滋賀県知事からも現状の計画では反対との立場が示されています。住民団体は、説明会の開催を求め、署名活動を展開中です。福井県若狭町側でも同様の動きがあり、県境を越えた連携が強まっています。
行政の対応として、高島市は環境影響評価の厳格化を事業者に要求していますが、住民側は変更案の公表後も不信感を募らせています。事業者は町民説明会を実施しましたが、参加者からは詳細データの開示不足が指摘されました。このような状況下で、住民は司法的な手段も検討しており、事業全体の中止を視野に入れています。
- 変更案の主な内容:風車高さ169メートル、出力17パーセント縮小、仮称変更。
- 反対の核心:景観損失、環境破壊、低周波音の健康被害。
- 地域影響:琵琶湖水源地の汚染リスク、観光・農業への悪影響。
- 運動の現状:市議会意見書、住民署名、県境連携。
今後の展望として、2026年春の環境アセスメント結果が注目されます。住民側は、第三者評価の導入や代替エネルギー案の検討を求め、事業の中止に向けた圧力を強めるでしょう。高島市の自然を守る観点から、再生可能エネルギーのバランスある推進が課題となります。
参考文献:
- 中日新聞(2025年11月12日):景観保護へ発電機小型化 計画案修正、三十三間山風力発電。
- 京都新聞(2025年12月22日):滋賀県高島市と福井県若狭町県境の大規模風力発電、事業者が計画変更案も地元に懸念の声。
- 福井新聞(2025年8月6日):若狭町・三十三間山風力発電 事業者見直し案示す 発電機小型化。
- X投稿(@zan4736511ほか):風力発電被害に関する住民意見。
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