情報源: 市の観光施設、移転後に入館者が激減 コロナ影響? 「場所分かりにくい」の声も 滋賀・高島

「われは湖の子」で始まる「琵琶湖周航の歌」の発祥地、滋賀県高島市今津町にある市の観光施設「琵琶湖周航の歌資料館」(同町中沼1丁目)が4月に移転して半年が経過した。入館者数は例年の約5分の1に激減している。市は「新型コロナウイルス禍の影響」とみるが、地元では移転を要因に挙げる声が少なくない。真相を探った。

 市によると、今年4月の入館者は260人と昨年同期比88%減。9月は375人と微増したが同77%減と依然厳しい状況だ。同館を含む市内観光施設は、市のコロナ禍対策で5月の大型連休期間中などに一時閉鎖した影響で、利用者数が軒並み落ち込んでいる。しかし同館入館者の減少は他施設と比べても顕著となっている。

 温泉施設「くつき温泉てんくう」(朽木)の9月利用者数は1万4682人で同9%減、農業公園マキノピックランド(マキノ町)の9月入り込み客数は2万4656人で同18%増と例年のにぎわいを維持する。同規模の近江聖人中江藤樹記念館(安曇川町)は4月入館者数は29人で同89%減と低調だったが、9月は207人と同42%減に回復した。

 琵琶湖周航の歌資料館(旧施設)の入館者の多くを占めていた今津港(今津町)の観光汽船の乗船者数は、4月は524人と同86%減で苦戦したが、9月は3995人で同11%減にまで回復した。だが、同資料館への客足は伸び悩んでいる。今津港への道沿いで草花を手入れするボランティア澤田清さん(91)は「資料館の旧施設を訪ねてくる観光客に、今の資料館の場所を教えても、立ち寄らない人が多い」と話す。

 10月下旬の土曜日、資料館を訪れた人に利便性を尋ねたが「場所がわかりにくい」との声が少なくなかった。兵庫県西宮市から来た藤井瑞生さん(59)は「駅改札付近に目立つ案内表示がなく、資料館入り口の看板も目立たない。近くまで来ても、あきらめて引き返す人もいるのでは」と話す。

 現在地への移転にあたって昨年6月、市に移転中止を求める2千人超の署名を市に提出した「琵琶湖周航の歌資料館を守る会」の西川あい子会長(68)は入館者の急減について「現在地への移転」を要因に挙げる。「観光客の動線から外れ、入館者数が減るのは分かっていたはず。市は集客への対応を早急にしてほしい」と訴える。

 入館者数の現状について市は「観光汽船の利用者数が回復しても資料館への来館者数が伸び悩んでいることから、移転の影響は否めない」と分析。集客に向けて「来春以降に策定を進める近江今津駅周辺のまちづくり構想で、多くの人に利用してもらえる仕掛けづくりを検討する」との方針を示す。

■琵琶湖周航の歌資料館 1998年にJR近江今津駅と今津港を結ぶ道沿いに開館。17年に旧制三高(現京都大)ボート部が今津に寄港した際、部員の小口太郎の詞を当時の流行歌「ひつじぐさ」(吉田千秋作曲)に乗せて歌ったのが始まりとされる「琵琶湖周航の歌」に関する資料を展示。駅乗降客や竹生島に向かう船の乗客が立ち寄る観光スポットとして親しまれ、入館者は年間約1万7千人に上った。市は今春、71年に建てた旧施設が老朽化したとして約150メートル北にある今津東コミュニティセンター内に新施設を開設した。