空き家の解体費用と売却査定を無料で試算できるツールが市版で4種類——「迷惑度診断」まで用意された

高島市が、空き家の解体や売却を検討する人向けの試算ツールを4種類、公式ページで案内しています。ページの更新日は2026年7月28日です。
いずれも株式会社クラッソーネが運営する外部サービスの「高島市版」で、利用は無料。滋賀県と同社が令和4年10月6日に「空家等の除却推進に関する連携協定」を締結したことにより、高島市内の物件でも使えるようになったと説明されています。
僕がこの4種類の並びを見て、いちばん引っかかったのは最後のひとつでした。「空き家の迷惑度診断」。
4つのツールが扱う領域が微妙にずれている
| ツール名 | 分かること |
|---|---|
| 高島市版 すまいの終活ナビ | 空き家の解体費用と解体後の土地売却査定の相場 |
| 高島市版 解体費用シミュレーター | 空き家の解体工事の概算相場 |
| 高島市版 固定資産税シミュレーター | 解体後の固定資産税の概算、維持費用と売却収支の簡易試算 |
| 高島市版 空き家の迷惑度診断 | 「管理不全空家等」になる可能性の診断 |
上の3つは、お金の話です。いくらかかるか、いくらで売れるか、持ち続けるといくら払うか。
4つめだけ性格が違います。市の説明にこうあります。「空き家が『管理不全空家等』になる可能性を診断します。国のガイドラインに基づき株式会社クラッソーネが開発しており、状況確認の目安になります。管理不全空家等として、指導・勧告を受ける可能性をご確認いただけます」。
僕は最初、上の3つだけのページだと思っていました。管理不全空家等というのは、2023年に改正された空家等対策特別措置法で新しく設けられた区分です。それまでは倒壊のおそれなどがある「特定空家等」だけが行政の指導対象でしたが、その手前の段階、つまり「放置すれば特定空家になりそうな空き家」を管理不全空家等として指導・勧告できるようにしました。
勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます。住宅が建っている土地は固定資産税の課税標準が最大6分の1に軽減されていますが、これが適用されなくなる。つまり税額が数倍に上がる可能性があります。
いや、この4つめのツールは、実質的に税優遇を失う手前まで来ているかを所有者に自己判定させる仕組みです。

表層は「便利ツールの紹介」、本質は「持ち主に自分で計算させる仕組み」
市がこの4つを並べて置いていることの意味を、僕はこう読みました。
空き家対策で行政がいちばん困るのは、持ち主が動かないことです。動かない理由は、面倒だからというより、判断材料がないからです。解体にいくらかかるか分からない。壊した後に土地がいくらで売れるか分からない。持ち続けたときの税金がいくらか分からない。分からないものは決められないので、そのまま放置されます。
意外と単純な話で、この4つのツールはその分からない部分を数字にします。しかも自分で入力して自分で結果を見る形なので、市の職員が説得する必要がありません。
固定資産税シミュレーターの説明が特に踏み込んでいます。「固定資産税納税通知書の明細を基に、空き家を維持する費用や解体工事後の固定資産税の目安額、売却した場合の収支を簡易に試算できるツールです。将来を見据えたファイナンシャルプランニングに活用ください」。
納税通知書を手元に置いて入力するツールです。つまり所有者本人しか使えない。そして持ち続けた場合と壊した場合の収支が並んで出ます。
ここで僕が評価したいのは、市が解体を促す書き方をしていない点です。すまいの終活ナビの説明には「親族同士での話し合いのきっかけにご活用ください」と書かれています。決めるのは持ち主と親族で、市は材料を置くだけ。
ですよね、と言いたくなるのですが、空き家の処分は相続で共有名義になっているとまずまとまりません。誰かが払うことになる解体費と、分けることになる売却代金を、同じ画面で見られるツールは、その話し合いに使えます。

民間1社に窓口を寄せる形の是非
ただ、引っかかる点もあります。
4つのツールと相談窓口が、すべて株式会社クラッソーネという1社のサービスです。同社は「全国約2,300社の解体工事会社をネットワークする解体工事DXプラットフォーム『クラッソーネ』を運営」する企業で、本社は名古屋市中区です。
相談窓口の説明には「空き家処分だけではなく利活用・売却を含め、最適な出口戦略の検討を支援します。不動産関連企業や各種専門家、士業ネットワークとの連携を通じて、空き家に関する様々な相談を1つの窓口で無料対応します」とあります。
さすがに、無料で相談に応じる民間企業の収益源は成約時の手数料でしょう。つまりこの窓口を使うと、同社のネットワーク内の解体業者につながりやすくなります。それが不利益とは限りませんが、市の公式ページから入ると公的な相談窓口のように見えます。
市の注記は簡潔です。「下記のシミュレーションは概算による参考値となりますので、詳しくは各専門機関等にお問い合わせください」。解体費用シミュレーターにも「シミュレーターの結果は、現地調査による正式な見積もり費用と差異が発生しますので、ご注意ください」「本概算相場は、解体費用を保証するものではありません」と書かれています。
まあ、書くべきことは書いてあります。滋賀県が県として協定を結んでいる相手なので、市が独自に選んだ事業者でもありません。
そのうえで僕が思うのは、市の窓口が別に用意されているかどうかが重要だという点です。このページの問い合わせ先は高島市市民協働課(0740-25-8526)です。ツールで数字を見たあと、市に相談する経路も残っている。

追いかけるべき点
僕が追いたいのは3つです。
ひとつめは、このツール群の利用が実際の解体件数に結びついているかです。県と同社の協定は令和4年10月なので、3年以上が経っています。滋賀県内での利用実績や除却件数が公表されると、施策としての評価ができます。
ふたつめは、迷惑度診断の結果を市がどう扱うかです。診断は所有者が自分で行うもので、市に通知される仕組みではありません。ただ市が管理不全空家等の指導を進める段階になれば、診断を受けた所有者と受けていない所有者で対応が変わる可能性があります。
みっつめは、高島市の空き家の数です。市域が広く、農山村部の集落を多く抱える地域なので、放置された家屋は増えやすい構造です。この数字が公表されるタイミングで、ツール導入の効果も見えてきます。
※本記事に登場するシミュレーションはいずれも概算の参考値であり、実際の費用や税額は物件の条件によって変わります。判断にあたっては専門機関への確認が必要です。
参照した主な情報
– 高島市「建物の解体費用・土地の売却価格などの目安を調べたい方へ」(ページID 13643)
